いちょうが立ち並ぶ、
いちょう通り沿いに低く軒を構えた平屋が不動家のすまい。
ほんのりと香ばしいかおりがしてきて、
陶器のカチャカチャと擦れる音が聞こてえる。
不動家を訪れると決まって淹れ立てのコーヒーをいただける。
結婚してからずっと喫茶店を経営してきた不動家。
仕事が中心の毎日で住まいや暮らしを深く考える機会も今までなかった。
4年ほど前、老朽化した店を見て突然の引退を決め、
紆余曲折を経てふたり暮らしを決めた。
店舗の無い、不動家の初めての住まいは
間仕切りのない空間に水まわりと寝室を足したシンプルな造り。
閉塞的にならないようにと吹き抜けを足した。
「明るいのと風がよく抜けるんですよ」と、ふたりは吹抜けを見上げる。お気に入りの空間だ。
朝はふたりで散歩をし、
近くの広場で名も知らない人と言葉を交わす。
仕事のないふたり暮らしにだんだんと馴染んできた。
「ふつうの暮らしはこれが初めて。
いつも誰かが訪ねてくるから退屈しませんね。」
これからのふたり暮らしはまだ始まったばかり。
敷地面積 198.34㎡(59.99坪)
延床面積 90.40㎡(27.34坪)
1F 90.40㎡(27.34坪)
家族構成 夫婦2人
竣工年月 2012年4月
①通りのいちょうが季節の移り変わりを教えてくれる。春に芽吹き、夏に茂り、秋に色を変え、冬に散る。夏は日射を遮ってくれる。冬は枝の間をぬって日が射しこむ。
②昔は“女性が淹れるコーヒーは飲めない”と拒絶された事があった。調理場にも女性は入れなかったとのこと。今は夫婦仲良く台所に立ち、共同でコーヒーを淹れている。③馴れた手つきで淹れるコーヒー。香ばしい香りが家中に広がる。
④吹抜けを見上げる。重厚感のある丸太梁を入れ、その上に木格子が架かる。吹抜けを通して入る光がまんべんなく部屋全体を明るくしてくれる。
⑤カメラのスイッチもお手製。連続して撮影が出来るように連動して動く金具も自ら加工をして組み立てた。野鳥撮影には全て欠かせない要素。一瞬一瞬を見逃せない。
⑥ご主人お手製のフィールドスコープ。各パーツを寄せて造り上げた。奥はお店を引退する直前に買った一眼レフ。順番が前後していたなら買えなかった品物だろうと笑う。⑦玄関アプローチ。日に幾人、不動家を訪ねてこのアプローチを上がってくる。玄関の奥に顔なじみ用の玄関が設けてある。